株式会社ワンスターは、ワンスターは単品リピート通販(サブスクリプションコマース)業界に特化したWEBマーケティング企業です。化粧品通販、健康食品通販企業をメインにマーケティング支援を行い、業界内では国内トップクラスの実績を作り出しています。業界に特化することで「事業計画作成・戦略立案」から「広告運用」「データ分析」「システム」「CRM」等、インターネット領域のダイレクトマーケティングを総合的かつ最適な形で提案しています。
そんなワンスターにて、エンジニアリングをツールとした新規事業立ち上げに関わる川島慎悟氏と千葉由規氏に、新規事業で求められる資質やワンスターで働く魅力について伺いました。

川島 慎悟(Shingo Kawashima)
株式会社ワンスター テクノロジーソリューション事業部 プロダクトエンジニアリング本部 本部長

千葉 由規(Yoshiki Chiba)
株式会社ワンスター テクノロジーソリューション事業部 プロダクトエンジニアリング本部セクションリーダー
研究が好きで没頭した大学院時代

── 大学院での研究内容と、その分野に興味を持ったきっかけを教えてください。
川島大学院での専攻は有機化学で、有機化学反応を設計する研究をしていました。原料と目的物を設定して、その間をつなぐ反応プロセスを作っていくイメージです。私の場合は主題として二酸化炭素を原料として人の役に立つ医薬品を作れないか研究していました。大きなテーマとしては地球温暖化防止という方向性があり、温室効果ガスである二酸化炭素を消費することで地球にとって有害な物質を減らしながら、人類にとって有用な化学物質を作ろう、という教授の発想から私が研究テーマとして取り組んでいました。しかし、所属していた研究室ではフッ素を反応させ、医療分野で脳や癌の研究に役立てるテーマがメインで、二酸化炭素について先輩の知見もない中で、海外の先行研究を参考にしながら研究を進めました。
その有機化学に興味をもったきっかけですが、小さいころから学研さんなどが販売されている化学実験キットが好きで、その延長線で高校でも化学に興味を持ったのだと思います。高校でも化学の分野に興味を持っていて、化学オリンピック(学校で習うような化学の内容が出題される筆記試験で点数を競うイベント)にも出場しました。
千葉私の進学先は農学研究科で、病原微生物の遺伝子を操作する研究を行っていました。病原微生物のうち、ウシなど家畜にも感染だけでなくヒトにも感染するzoonosis、いわゆる人獣共通感染症を扱い、病原微生物に蛍光タンパクを組み込む方法を研究していました。 研究は基礎研究だったのでなかなか成果を出せるものではなく、様々な課題に直面しながら実験を繰り返していました。
私は実家が兼業農家だったので、関連する分野として大学は農学部に進みました。農学部のカリキュラムで植物や動物、環境など様々なことを学びましたが、特に生物に関する授業に興味を持ちました。その中でも、動物の病気を治すことに貢献できればと思い、研究室と研究テーマを選びました。
── お二人とも研究に力を入れていらっしゃったようですが、博士後期課程(博士課程)への進学は考えなかったのですか?
川島私は研究が好きでしたし、博士課程で研究に没頭できたら楽しいだろうと思っていました。就職活動をしていた時期も、早く就職活動を終えて研究を進めたいと思っていたくらいです。しかし、博士号取得後の長期的なキャリアを考えた時、やはり研究者は狭き門ですし、民間就職したとしても狭い専門分野にぴったり合致した業務に携われるかも分からない。それなら最初からもっと広いキャリアを探そうと思い、博士進学せず就職することに決めました。
千葉私の場合、実は修士課程を3年で卒業しています。当初は博士進学するつもりで研究をしていたのですが、やってみると課題が多く成果が見込めなかったので、解決に腰を落ち着けて取り組むため在籍を1年延ばしました。それでも状況を打開できなかったので、この研究テーマで博士号を取り業績を残していくことは難しいと考え、博士進学を諦めて就職活動をしました。
ゼロからイチを創り出す「起業」というキーワードに惹かれた

── 就職活動で主に見ていた業種や職種は何ですか?
川島最初は専攻に近い分野である化学メーカー、医薬品メーカーなどの説明会にも参加しましたし、その他の企業の説明にも幅広く足を運びました。そこで話を聞く中で、大企業は自分に合わないのではないかという印象を受けました。加えて、あるベンチャー企業の方が、まだ実績がない中でも将来に対する展望を明るく語っており、その「何もないところにビジネスを創出する」という考え方に共感し、ゼロからイチを生み出すという研究にも似た側面との親和性も感じて「ベンチャー企業」というくくりで就活を進めました。また別の観点で、学生のころからHTML, CSS, PHPを趣味で扱っていたので、WEBでアプリやサービスを創ることにも興味がありました。そこで「ベンチャー×IT関連」という分野で企業を絞り込んでいきました。
千葉私の場合、当初は専攻に近いバイオベンチャーに興味を持って企業を探していました。しかし当時はまだバイオベンチャーはそれほど多くなく、例えばユーグレナさんのような成長して体制の整った企業か、逆に従業員数名で、中途採用か直接的に関連する分野の博士号取得者しか採用していない企業ばかりでした。それなら、特定の企業に就職するのではなく自分でそのような場を創れば良いのでは、という考えで企業を探し始めました。
── お二人とも、自らビジネスを創出する、という方向性にたどり着いていますね。最終的に入社を決めたきっかけは何ですか?
川島理念に共感して入社を決めました。当時の採用メッセージは「起業家集まれ」というスローガンを掲げており、私も同期も自分で起業したいと考えて入社している人がほとんどでした。ちょうどNewsPicks、SmartNews、グノシーといったサービスが広まってきた時期で、インターネットの世界ではアイデアと技術で「刺さる」サービスが創出できるということを感じていて、自分でもそういったサービスを創ってみたいと考えていました。同期で入社している人も起業というキーワードに共感して入社した人がほとんどでしたね。
── それでは、どのような人がワンスターという会社や新規事業開発というキャリアに向いていると思いますか?
千葉業務をする上で必要なことは、私もハードスキルよりはソフトスキル、人間性の方がイメージしやすいですね。一緒に働きたい人物のイメージ像として、真実・誠実・謙虚が挙げられると思います。私の定義付けは、「真実」は隠すものがなく嘘偽りないということ。「誠実」は自分に対して誠実であるという意味で、常に自分を律して行動できること。「謙虚」は自分に足りないことをきちんと把握して、成長していくために行動できることです。私の経験で言えば、修士論文はまさにこの壁でした。科学は真実でなければなりませんし、研究は自分で進めていかなければなりません。また実験結果や自身の考えを客観的に見つめなおさなければなりませんでした。これは研究に限らずとも、何かに挑戦して逃げずに真正面からぶつかった経験のある人には備わっていると思います。
世の中にないものを探し求める新規事業開発は、研究と似ている

── 入社して感じたことや、仕事の面白さは何でしょうか?
川島私は入社前から多少WEB系の知識があったこともあり、最初にシステムを扱う部署に配属されました。そこでコンサルティングをしていた際は、顧客との折衝をする中で「頼られている」という感触があったので、それに応えなければという想いを強く持っていました。社歴が浅いとか、知識が不足しているなどは関係ありません。プレッシャーとしてではなく、あくまでプロとして顧客に対して何らかの有意義なフィードバックをしなければならないと日々考えていました。
仕事の楽しさとして挙げられるのは、失敗できる数が圧倒的に多くて良かったと思います。新規事業では、大学院での研究のように先行研究が試していないことに挑戦する、知見がない中でゼロから作る、といったことが多くあります。研究活動を通じて失敗に対して鈍感力を身に着けたというか、失敗しないと成功しないということを学んでいました。いかに速く、いかにたくさん失敗できるかがゴールに結びつく最短のプロセスだと考えていましたが、入社してからは、いまの職場がそれを実践できる場であると考えています。
── 高いプロ意識を持ち、同時に多くのチャレンジをするということでしょうか。新規事業に取り組む際や、そこで失敗を乗り越えるためには何が求められると思われますか?
千葉例えば大学院で実験している時は、イメージとして「多くのマスがある中に、一つだけ正解のマスがあり、それをしらみつぶしに探している」感覚でした。正解に至っていないので前に進んでいないけれども、正解でないことは分かった、という意味で逆説的に前に進んでいる。失敗を失敗として捉えていなかったと表現するべきかもしれません。新規事業への挑戦もそれと共通する部分があるのではないかと思います。
川島今の千葉の話にはとても共感します。「失敗はそれが成功ではないことが分かったという成果」という姿勢はとてもポジティブで、建設的です。新規事業は9割以上が失敗に終わるので、上手くいっていないことが普通の環境であり、推進していく道は非常に苦しく、9割以上が失敗に終わると言っても、自らギブアップする方が多いのではないでしょうか。そこに耐えられるマインドの持ち主かどうかは重要なポイントだと思います。研究をしていた時も同じ感覚で、終わりが見えない中でどう進めるか。もうすぐ突破口が見えるかも知れないし、そうではないかも知れない。もがいている方がエキサイトできる性格の持ち主が向いているのではないかと感じています。
── お二人とも大学院では真正面から研究に向き合ってこられたようですが、もしいま大学時代に戻ったら、何をしますか?
千葉私は学生のうちに起業にチャレンジするのではないかと思います。学部時代は体育会のテニス部に所属していたので、当時であればそれに関連して筋力トレーニングなどのサービスなどを模索したと思います。なぜ起業かと言うと、自分の学生時代を振り返ると、学部では部活動、大学院では研究と、二種類のことしかやっていなかったのが反省点です。企業は、就職活動以来のテーマであることも影響していますが、学生時代の自分の幅を広げる活動であり、能力的にも最も挑戦的な世界だと思います。
── 千葉さんから「起業する」という話がありましたが、川島さんも「起業」というキーワードで就職先を決められています。もし、いま起業するとしたら何をしますか?
川島私は社内でForm Tailorという自社サービスの立ち上げを主導しました。起業はすでに社内でやっている、というのが正直な想いですね。そこに関わったきっかけは、当該サービス群の担当になったことです。その当時はForm Tailor以前のプロダクトが緩やかに衰退し始めた状況下でしたが、過去にシステムコンサルティングをやっていた時の業務知識を用いてプロダクトを改善できる感触がありました。ちょうど良い時期に、無意識に備ができた状態で、仕事が回ってきたイメージで、パズルのピースがはまったような感触です。
個人でもやりたいことはもちろんありますが、こういった巡り合わせも重要な要素だと思いますので、今はエンジニア業務を通じていかに会社をスケールさせるか。ワンスターという会社の中での様々な「起業」に集中しています。
── お二人とも、真正面から大学院での研究と向き合った経験を持ち、そこで培ったマインドで、今度はビジネスの世界での新しい価値創出に取り組んでいらっしゃいますね。興味深いお話、ありがとうございました。