社会で活躍する修士・博士・ポスドクのキャリアストーリー
「データを紡いで、気が利いた金融を体現する」グループ横断のデータ活用で金融サービスのグレードアップを目指す新生銀行のグループデータ戦略室

株式会社新生銀行は、リテール業務、コンシューマーファイナンス業務、法人向け業務などの幅広い事業を通じて、お客さまの多様なニーズに応える金融サービスを展開しています。また、個人向けローン事業を展開する新生フィナンシャル株式会社や、ショッピングクレジット、クレジットカード、決済などの事業を手掛ける株式会社アプラスは、新生銀行グループの中核企業として、個人向け金融サービスを中心に事業を行っています。
そんな新生銀行のグループデータ戦略室にて、グループ内横断のデータ活用で「気が利いた金融」の体現を目指す樋口室長に、グループデータ戦略室のミッションやデータ活用で目指す姿について伺いました。

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樋口 雄飛(Yuhi Higuchi)

株式会社新生銀行 グループデータ戦略室長

お預かりした個人情報から、お客さまの立場に立って「気が利いた」最適なサービスを提供する

── まずグループデータ戦略室について教えてください。

樋口グループデータ戦略室は、新生銀行グループ内の個人向けビジネスの所管企業・部署に向けて、データを活用したコンサルティングや問題解決のサポートをする役割を担っています。新生銀行グループで提供している個人向けビジネスとは、預金・住宅ローンの融資などリテール業務(新生銀行)、またグループ会社ではクレジットカード事業(アプラス)、カードローン事業(新生フィナンシャル)があり、各事業に関わるデータを横断的に管理・分析する基盤を整えています。これらのデータを活用し、各事業の付加価値向上を手助けしています。

例えば与信(融資)管理の高度化で言えば、お客さまの信用リスクにおいて返済が滞る可能性の高いお客さまを判別するため、貸し倒れ(返済不能)への影響度の大きい隠れたデータは無いかといった信用リスク管理モデルの高度化に向けた分析を行います。他にもマーケティング領域では、例えば、webの利用履歴やクレジットカードの購買行動の変化といった各企業の保有するデータを統合して、サービス利用見込みの高いお客さまの判別を高度化する取り組みを行っています。

── データの利活用はどの企業でも議論になっているポイントかと思いますが、何か特徴はありますか?

樋口目指す姿は「データを紡いで、気が利いた金融を体現する」と定義したグループデータ戦略室のミッションに集約されています。個人のデータの利活用はバランスが非常に難しい分野です。例えば過剰に個人データを使用して宣伝・広告を送り付けると、受け取る側は「勝手にデータを使われて気持ち悪い」と感じます。他にも融資の判断においてデータが多いほどマイナス点が増え、マイナス要素があるから融資の審査を落とそう、といったことになりがちです。そういった場面で、お客さまの立場に立って「気の利いた」サービス提供に結び付けていきたいという趣旨です。データをきちんと分析し、お客さまに本当に有益な情報を定義できれば、お客さまにとって価値のあるターゲティングや与信(融資)判断になると考えています。

このミッションを実現するため、グループデータ戦略室では「データサイエンティストコース」として、新生銀行の他の総合職とは別枠で採用を行っています。データサイエンス分野の知識、エンジニアリングの知識を備えた人材の獲得を通じ、組織力の強化をはかっています。

── 新生銀行グループは、企業の特徴としてどんな点が挙げられるでしょうか?

樋口部署や役割によっても見方が異なりますが、グループデータ戦略室の室長としての視点から言えば、「大きすぎず、小さすぎない」点が挙げられます。大きすぎると身重になって動きが遅くなりますし、小さすぎると資金やリソースが不足して実行力が下がります。ある程度の規模があるという利点を活かして、幅広くスピード感のあるビジネス展開ができるということが新生銀行としての強みではないかと思っています。金融領域の事業会社として、住宅ローン、クレジット、カードローンなどグループ横断で様々なデータを扱うことができますし、当該領域においては幅の広さとスピード感のバランスがとれていると思います。中でも、特にグループデータ戦略室は成長領域と位置づけられていることもあり、ミッションの定義から採用活動を含めた業務遂行までかなり自由度高くチャレンジさせてもらえています。

データから一人ひとりの人生が見えてくる。ライフステージの変化で「あったらいいな」を実現する

── 取り扱うデータの特徴や事業領域ならではのポイントを教えてください。

樋口まず特徴として、銀行預金、住宅ローン、カードローンなど、事業領域が異なるとデータの性質や形式も異なります。加えてテーブル数が多く、複数のデータを自ら組み合わせながら分析を進めていくことが求められます。データサイエンティストは花形である「分析」がスポットライトを浴びる傾向がありますが、SQLでデータを抽出・前処理を施し、分析できる形にしていく力も必要です。例えばグループデータ戦略室では、銀行内のデータおよび各社のデータから連携・抽出してきた独自のデータベースを構築しています。独自の基盤上で出自の異なるデータを組み合わせ、統合したうえでお客さまの行動分析を行います。一方で加工しさえすれば、銀行預金のデータ、住宅ローンのデータ、カードローンのデータなどをまとめて即座に分析できます。それらを用いてマーケティングのような「攻め」の分析、与信管理のような「守り」の分析など様々なデータ分析に関わることができる点は、面白さのポイントとして挙げられるのではないでしょうか。

加えて、データ管理の高度化についても並行して検討しています。すでに独自のデータベースへのデータ抽出と定例的な分析についてはフローを構築して運用していますが、当然改善の余地があります。例えばwebでの閲覧履歴から興味関心のありそうな情報を営業担当に日次で還元し、お客さまとのコンタクトに活かすというようなイメージです。ビジネスの種類によっても時間軸が異なるのですべて早ければ良いという訳ではありませんが、資産運用など市場のリアルタイム性が求められるような分野では特に有効だと考えています。このように、どの分野でどんなデータを整備すればより価値のある情報提供ができるのかを検討し、データ基盤を高度化していくことも大きなミッションの一つです。

── どのような切り口で新しい価値提供を模索しているのでしょうか?

樋口もちろん、一番は各事業を所管している部署やグループ企業の課題を解決することです。最前線で触れているカウンターパートが最も必要としていること、課題と感じていることを解決するサポートをしています。
それ以外の観点では、自分が日常で感じる問題意識が重要だと思います。私個人では、例えば車のディーラーでの経験で感じた問題意識がありました。車を購入した販売店に立ち寄り、店頭で担当の方と話をしていた時に「バッテリー交換は必要ないですか」「次回はいつ頃、メンテナンスをご案内しますか?」と言われました。実は直前にバッテリーは交換したばかりで、なおかつその際に次回メンテナンスの予約をしていましたが、担当の方にはそれらの情報が還元されていなかったようでした。もしシステム的に担当者をサポートしてうまく知らせることができていれば、メンテナンスに合わせて購入する可能性のあるオプション部品のカタログを用意して提案してみるとか、一歩踏み込んだ営業ができると思います。そういった場面に接すると「データを用いてこうすればもっと気の利いたことができるのでは」というアイデアが湧くと思います。

── 直接個人データを扱うので、消費行動や家族構成の変化など、データから垣間見える「ヒト」をイメージしやすいというのも業務の特徴かも知れませんね。

樋口まさにその通りで、データからお客さま一人ひとりの人生が見えてくる、というのも面白いポイントです。例えばマーケティング領域でクレジットカード利用データに着目すると、ベビー用品を取り扱う店舗での買い物が増えると子供が生まれたのではないか、ガソリンスタンドの定期的な利用が生まれると車を買ったのではないか等、お金の動きをみることでお客さまのライフスタイルの変化を推察できます。その変化から生まれる金融ニーズの仮説を立てて、お客さまにとって気の利いたコミュニケーションを考え、グループのビジネスを通じて実現していくことが事業会社としての醍醐味だと思います。
自分の日常の中に業務のヒントが眠っていて、こうあってほしい、というサービスを実現するためにデータを活用して何ができるか考える、というのが面白いポイントです。

「好き/嫌い」を掘り下げて価値判断を。粘り強さと学び続ける心をもって、自分の考えでやり遂げてほしい

── グループデータ戦略室で求めている人材像について教えてください。

樋口求める『人財』像については、「常に新しい技術やビジネスを貪欲に学びながら、データから価値を創出することに専門性を持ち、ビジネスの問題解決をリードする人財」と定義し、それを分解する3つのキーワードを設定しています。

まず1点目として、GRIT(Guts, Resilience, Initiative, Tenacity)があります。グループデータ戦略室は商品・事業を担当している部署ではないので、各事業の担当部署と連携しつつ担当者を説得し、彼らのビジネスに対して成果を出していく必要があります。データ分析案件は、データを分析して結果や成果が曖昧なまま終わるケースが少なくないですが、成果を出すために求められるのは強い意志を持ち、粘り強く考えて、自ら行動し、最後までやり遂げることです。

次に2点目として、学び続けること、ラーニングアニマルであることを挙げています。技術的にもビジネス的にも新しい情報を吸収し、成長することが求められる部署ですので、自律的に学び続けることができる姿勢を重視しています。これまでに学んだ知識や興味を持っている分野に関して、単純に興味を持って終わりではなく、何らかの行動を伴って学びにつなげる経験していることは重要だと思います。

最後に3点目として、鳥の目・虫の目・魚の目という三つの目を持ってほしいと考えています。まず問題の全体像を俯瞰的に捉える必要があるので「鳥の目」が必要です。一方で具体性を伴って多面的な見方(=複眼)で案件を進めていくことが求められるので「虫の目」も必要です。さらに、何が求められていて、実施した施策に対してどう反響があったか、次にどうしていくかといった、ビジネスの一連の流れを読む力も重要だと思うので、「魚の目」も加えています。

データサイエンティスト協会で示されているビジネス力、エンジニアリング力、データサイエンス力という定義付けで言えば、事業会社であることから、最も重要なのはビジネス力ではないかと思います。カウンターパートとのコミュニケーションもさることながら、本源的に何が問題で、何を解かなければならないか、というビジネス的な課題設定がきちんとできるかどうかが求められます。

── そのような能力は、どういった場面で垣間見ることができるでしょうか?

樋口何か自分で試してみたことに対する理由を、きちんと自分で考えられているかどうかだと思います。例えばデータ分析でも、決定木分析やクラスター分析など様々な手法がある中で「とりあえず流行っているので」とか「それが良いと聞いたので」といった安易な『コピペ』がよくありますが、それだとポテンヒットはあっても、安定した成長に繋がらないと思います。そうではなく、その人なりにビジネスを分解し、原因を探ろうとした過程があれば、いずれは良い結果にたどり着くと思います。

一方、性格的にはちょっと頑固さや、自分の意見をしっかりと主張することが必要ではないかと思います。別の表現をすれば、没頭した経験がある人、こだわりがある人、好き嫌いがある人でしょうか。もちろん凝り固まった意見は許容できませんが、自分が触れた日常生活の中のサービスに対して「良い/悪い」ではなく、自分の主観として「好き/嫌い」を出発点に考えて掘り下げることで、自分なりの考えや感じ方が明確になります。これをきちんと整理・言語化できることが求める『人財』像の基礎になっていると考えています。

── 新生銀行のグループデータ戦略室を志望する学生や、データサイエンス分野一般を志す学生に対するメッセージはありますか?

樋口将来、データサイエンスという分野は残ると思いますが、コモディティ化も進み、モデルの構築や統計の理解などある程度のレベルまでの知識は淘汰されると考えています。その時にデータサイエンティストとして他者と差別化するためには、「自分の頭で考える力」や「最新の技術を学ぶ力」が必要だと考えています。先に述べた話とも共通しますが、学ぶ上では感性のようなものが必要で、世の中の事象に「好き/嫌い」と自分なりの価値判断を持たないと学びと成長を得ることは難しいと思います。大学の授業や研究に限らず、コンビニのバイトでもサークル活動でも良いですが、目の前にあることについて「どう感じたか?」「どうやったら改善されるか?」といったことを考え続けることができれば、社会に出て日々ビジネスを扱うようになっても高いモチベーションで過ごしていくことができると思いますし、多くのことを吸収して成果を発揮できる社会人になれると思います。そのために、具体的な行動や特定のハードスキルではなく、しっかりとした心構えを身に着けてほしいと思います。自分の感性を磨いてくれるような経験、長期的に自分を成長させてくれるようなマインド、ソフトスキルを早い段階から磨いてほしい、というのが私の想いです。

── グループデータ戦略室のミッション、そこで働く上で求められることが非常に良く分かりました、貴重なお話をありがとうございました。

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樋口 雄飛(Yuhi Higuchi)

株式会社新生銀行 グループデータ戦略室長

2008年、神戸大学大学院 自然科学研究科修了(修士)。
株式会社野村総合研究所にて戦略コンサルタントとして経営戦略・マーケティング戦略・業務改革等、業界・テーマ横断でコンサルティング業務に従事。
2016年3月より株式会社新生フィナンシャルに勤務し、カードローンの貸倒モデル高度化に取り組んだ後、現職でグループにおけるデータ戦略立案と全社的な優先度に応じたメンバーアサインや調整に従事。
修士論文のテーマは、無線通信においてトラフィック毎の要求水準をもとに優先制御(最適化)するスケジューリングシステムの構築。